文芸船

生還

流行の服と
アニメの聖地と
高級なランチに珍しい酒
歴史の遺産もあって
最先端の電気製品も目の前に

高速の公共交通機関で結ばれ
情報は毎日更新され
深夜でも食事に困らない
外国人とも語り合える
満たされた街
首都の輝き

輝きから離れた今
くすんだ夜闇の中
無いものを数えながら
鹿の歩く街を
寒さに襟を立てながら歩く

ふと顔をあげて
ひとつだけ
首都で喪っていたものに
澄んだ冷気の中で目を見張った
オリオンの三つ星が
軋み続けていた心臓の歯車に
熱い滴を垂らした
枯渇したはずの言葉が胸に湧出する

星のある世界に
ようやく帰り着いたんだ

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