ブルドーザーを追っ払え
概要
幼稚園から小学校低学年対象の人形劇の脚本。人形はギニョールを想定しているが、他の方式でも可。
- ミャオ
- おとなしいため、いつも馬鹿にされている猫。心根は優しい。
- チュー太
- 機転が利くネズミ。常に引き締まった感じ。
- ネズミ軍団
- チュー太の仲間。(ペープサート、人形。数を強調)
- 猫1・猫2
- ミャオをいつもいじめる猫。気取った風貌、または意地悪な風貌。
- ブルドーザー
- 悪役。森の乱暴者。(大型ペープサートか人形)
- 舞台
- 深い森。遠景の丘に大木が一本立っている。ブルドーザーが崩す山。
脚本
第一幕
- 猫(声複数)
- ミャーオ、ミャーオ、ぼけ猫ミャーオッ!
- ミャオ
- うるさいな。どうでも良いだろ!
- 猫1
- (馬鹿にする感じで)ミャオ、ネズミとれるようになったかい?
- 猫2
- よく助かったね。ごみ箱にお尻はまってたのに。
- 猫(声複数)
- ミャーオ、ミャーオ、失敗ばっかのニャンニャンミャーオ!
- ミャオ
- もうやだっ。僕でかけるよ。
全員退場。真ん中に丘を出してブルドーザーの音。ブルドーザーが暴れながら登場。
- ブルドーザー
- そーれ、ネズミども。ここは俺様の場所だ、でていけーっ!
- ネズミ軍団
- ひえーっ! (ネズミ軍団とチュー太、飛び跳ねて退場)
- ブルドーザー
- こんな山なんて一崩し、それっ! (山は左右に揺れて消滅)
- ブルドーザー
- あっはっはっ!
- チュー太
- 今にみてろ。
ブルドーザーは左手に退場、チュー太は右手に退場。ミャオが左手から歩いてくる。
- 猫(声複数)
- ミャーオ、ミャーオ、失敗ばっかのミャーオ!
- ミャオ
- (のんびりと)僕はミャオ。まだネズミ一匹捕まえられない。おかげで「ドジ猫ミャオ」だって。おっととと。(ミャオ、つまづいて転ぶ)
- ミャオ
- あいたた。なんでこんなとこに石ころがあるんだ。
- チュー太
- (右手の袖から半身だけ出して)猫でも転ぶんだね。ドジな奴。
- ミャオ
- ネズミめ馬鹿にしてるな。よーし。捕まえてやる! (チュー太に飛びかかるが、軽くかわされて転ぶ)
- チュー太
- あっははははっ。おかしな猫だ。とろいとろい。
- ミャオ
- ふん、どうせ僕はのろまさ。何だって言うんだい?
- チュー太
- (深刻な声で)今、ネズミたちで困ってることがあるんだ。
- ミャオ
- 困ってること?
- チュー太
- 大きなブルドーザーだよ。あれがぐわわわーんって走ると、あっというまに僕たちの家が壊されちゃうんだ。
- ミャオ
- うんうん。
- チュー太
- だからさ、あれを追っ払いたいんだ。
- ミャオ
- えーっ、ブルドーザーを追っ払うだって?
- チュー太
- そう。だから君に手伝ってもらいたいんだ。
- ミャオ
- 無理だよ、無理。ブルドーザーなんて怖いよう。
- チュー太
- (鼻で笑って)そんなことだから他の猫に馬鹿にされるのさ。
- ミャオ
- けどさあ、ブルドーザーだよ?
- チュー太
- そりゃ僕だっていきなり喧嘩する気はないよ。だからさ、へへへ。耳を貸してごらん。(ミャオに顔を近づける。)
- チュー太
- (早口で)ごにょ、がにょぐにゅごにょ。
- ミャオ
- (ゆっくりで)うん、うんふん、ふーん、はん? ほう、うん!
- チュー太
- ね、できそうだろ。
- ミャオ
- けど僕、そんな難しいこと、やっぱり怖いよ。
- チュー太
- 練習さえすればいけるよ。他の猫たちに見せつけるんだ。絶対うまくいくよ。
- ミャオ
- うん!
二匹、うきうきした調子で連れ立って退場。音楽でミャオ、チュー太登場。ミャオは挨拶・ダンスをチュー太の前で繰り返す。ネズミ軍団、後ろで行進練習。曲の終了で幕。
第二幕
幕が上がるとブルドーザーが山を崩している。チュー太とミャオは草むら(舞台の裾)からブルドーザーを見ている。
- ブルドーザー
- (歌う調子で)どーんと崩せ、がん、と穴掘れがーりごり。どーんと崩せ、がん、と穴掘れごーりがり。
- チュー太
- あーあ、またやってるよ。
- ミャオ
- ほんっとに大丈夫かな。
- チュー太
- 大丈夫さ、まかせとけって。それ、行け。
- ミャオ
- ブルドーザーの前に出る)にゃーん、にゃんにゃん、にゃおん。
- ブルドーザー
- なんだこのドラ猫。邪魔だぞ。
- ミャオ
- (ブルドーザーの前で踊り出す)にゃんにゃん。ブルドーザーさん、僕のダンスを見てくれない?
- ブルドーザー
- ふーむ、たまには良いか。
- ミャオ
- (音楽に乗って踊りながら歌う)みゃーにゃにゃにゃん、にゃん。
- ネズミ軍団
- (チュー太を先頭にブルドーザーの背後の木に行進)
- ミャオ
- みゃーにゃにゃにゃん、にゃん。
- ネズミ軍団
- (一斉に木をかじって)がりごり、ぎりがりがりごり。
- ブルドーザー
- ん? なんか変な音が聞こえるぞ。
- ミャオ
- それは僕の足音さ。ほら爪で引っかけば、ばりばり、きりりきり。
- ブルドーザー
- (偉そうに)ふーん。
- ネズミ軍団
- (木が傾くのにあわせて)がりごり、ぎりがりがりごり。
- ミャオ
- みゃーにゃにゃにゃん、にゃん。
- ネズミ軍団
- ばっきん! ミャーオ、たっおれっるぞーっ!
- ミャオ
- さよーならーっ!
- ブルドーザー
- う、うわーっ! (木の下敷きになり動かなくなる)
- チュー太
- (飛び出してきて)やった、やったあ。
- ミャオ
- 勝っちゃった。
- チュー太
- ほーらね。ブルドーザー相手でも勝てただろ。
- ミャオ
- いや、えへえへ。
- チュー太
- ミャオも一人前だね。これからもよろしくな。
- ミャオ
- うん、チュー太もね。
役の工夫
- ネズミ軍団は様々なネズミをユーモラスに描くと良いでしょう。思い切って木をかじるシーンを林業の中年男性風にする、ヤンキー風にするなど。
- ミャオのダンスにはリズミカルな曲を選びましょう。
- 機転の利くチュー太と間抜けなミャオ、それに乱暴者のブルドーザーの性格の差をはっきりさせましょう。
- ブルドーザーは、できる限り男声で、恐い感じで演じた方が望ましいでしょう。
- チュー太は少しお洒落にした方が良いと思います。主役のミャオは優しさを表現したいものです。
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