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早期退職した軍隊長が念願の新居を構え、ゆったりとした日常を送ろう、と思いきや謎の魔法少女が現れてドタバタ日常が繰り広げられる。カラー画が極めて美しいので、読み始めるまで内容がほのぼのコメディファンタジーだとは思わなかった。
外では完璧人間美人だが、自宅に帰るとわがまま放題だらけ放題のうまるちゃんと同居している兄の掛け合い日常。ダラダラボケボケの日常漫画だが、いわゆる萌え系日常物ではなく、明確なギャグ路線。でもほんわか話もあり、軽く楽しく読める。
呪われた切れない髪を持つ少女を巡る、殺人鬼の末裔たちの戦い。怪奇ホラーとスプラッタな場面も多いのに、絵柄は可愛らしく王道のボーイ・ミーツ・ガール。ぎりぎりのバランスの中で恐怖よりも少年漫画と恋愛漫画寄りになっているのは、絵柄とヒロインの純真さのおかげか。子供向きではないかも。
意志を持った機械「がじぇっと」を通して、思春期の揺れる気持ちを描いた作品。作者特有のギャグセンスは健在だが、中学生の大人になりきれない心理描写と精選された詩的な独白、独特の機械デザインのセンスに惹かれる。デフォルメされた絵本的な画面が、むしろ心の揺らぎと暖かさを素直に伝えてくれる。
学園アイドルの女子高生が民間警察のエージェントとして活躍する。学園物、ボーイ・ミーツ・ガールの王道とガン・アクションを上手く合わせた漫画。アクション場面と内面描写の両方が描かれており、テレビの刑事ドラマよりもしっかりしているかもしれない。人物は比較的肉付きの良い描き方をしているが、最近の萌え系よりバランスが良いと感じる。
SFの表題作ほか、離島の生徒の転校、子供の頃の失敗など日常の悩みと向き合う短編集。重い内容もあるが、殊更に主張を叫ぶより、緩やかな快復が中心なので最後は静かな気持ちになれる。柔らかなタッチの絵柄が魅力的。
荒っぽい悪魔祓いの修道女のロゼットと、彼女と契約した悪魔のクロノ。契約により悪魔の力を発揮するたびにロゼットの寿命は削られていく。重い背景とロゼットの明るさ、華やかな絵柄の組み合わせが絶妙。かつて角川書店で出版されていた単行本(絶版)の新装版。全8巻。
異星人が普通に地球人と暮らす時代。異星人という障壁を超えて実る5つの恋。5つの短編が緩くつながり合い、一つのほの甘い物語空間が秀逸。短編集だが、一つ一つを大切に読んでいく価値があると思う。
SFや死後の世界、現実物と広範囲に少女の気持ちの揺れを描いた5編の短編集。少女漫画だが現代小説に近い作品で、繊細な透明感に魅せられる。
ファンタジー好きで現実に嫌気を抱く女子高生とファンタジー嫌いの男子高校生が出会い、変わっていく。コメディ風ながらしっかりとした青春物。1巻完結作品。
短編集で5作収録。表題作は平安末期の大姫と義高を題材とした悲恋物だが、平家物語の儚さよりも幼さゆえの暖かさと悲しみを描いた、読後しばらく胸を打つ優秀作品。藤野もやむの作品の中でも初期なので、画力は弱いかもしれない。
醜い悪意に感応して殺人鬼と化す美少女・流と、彼女に恋され彼女の衝動を唯一抑えられる少年・王士。ベタなラブコメと社会問題の事件を絡ませた怪作。作者は元々暴走族漫画を描いていたが、暴力場面はそれ以上にきつい。
悪魔の少女と手下の悪魔が貧乏少年の家に居候する。曲線中心の可愛らしい絵柄と呑気な話の中にブラックユーモアが不思議に光る。ブラックユーモアは社会派のきつさがあるので、実はかなり大人向きかもしれない。
詐欺師(シロサギ)を詐欺にかけて生きる「クロサギ」。スリル感はあるが、裏世界ものには珍しく薄い絵柄で人間の機微も軽快で読み易い。
ひきこもり中学生・ジュンの元に少女のように行動するアンティークドールが現れる。各登場人物が抱えるもどかしい弱さと葛藤の描写が目を惹く。ファンタジー世界と軽いコメディ、そしてどうしようもなくつらい日常の現実を正面からぶつけてくるので、きちんと読むと結構時間が必要。第1部は幻冬舎で出版、第2部から集英社に移行して全話完結した。第1部も集英社より新装版で出版された。
「夢」の力で異界の者を祓う者たち。絵柄や語り口は軽い調子だが、画面に凝縮された象徴的な事物や異界の感覚が心を惑わせる。フロイト的な世界観と民俗学的な印象が入り交じったような、非常に特異な感性の幻想漫画。表紙は一見子供っぽいが、大人向きの漫画だと思う。
白内障を患った作者が通院、手術し快復するまでを描いた漫画。作者特有のきついギャグは健在だが、ゴーマニズム宣言と異なり個人的な不安と安堵を読ませる。こういう作品も書けるのか、と驚いた。最近の政治物も入っておらず、下ネタも少ないため、絵柄以外の理由で小林よしのりが嫌いな人にもおすすめ。
トレパネーション(頭蓋骨切除手術)を受けたホームレスの男が、他人の内に抱える闇を姿として捉える能力を手にする。強烈に主題性の強い作品。暴力性が強い成人向け。
ごく普通の人の日常を描いた短編集。独特の細い線と何気ない街の風景が良い。表題作のオープニングの線画は絵画的な鑑賞に堪えるレベル。表題作は漫画よりは現代美術画連作的な作り。
大妖魔の三只眼吽迦羅(さんじゃんうんから)・パイと元高校生の无・八雲の冒険恋愛ファンタジー。オリエンタルな雰囲気と、ヒロインの二面性から来る可愛らしさが良い。絵柄は少し癖が強く、とくに初期は少し劇画的に線の多い絵だが後半はアニメ絵寄りになった。絵柄のイメージと異なり、流血場面や手足が取れるような場面が意外に多いので注意。
明治初期を舞台に実在の人物を絡めつつ剣客・剣心の活躍を描く。少年ジャンプ王道の戦闘物が中心となっているが、少年ジャンプ系には珍しく日常モノローグも多く、また悩んだり迷ったりする情けないような場面も多いが、それもまた一つの魅力となっている。実写映画は比較的忠実。
ビデオから出てきた少女を関わらせた恋愛漫画。リアル寄りの絵柄で性的に際どい場面も複数見られるが、基本的にはエロネタだけの漫画ではなく、精神的な迷いや成長が重要な役割を占めている。背景や室内の装飾が丁寧に描き込まれており、きれいな作品。
壮大な歴史ファンタジー。主人公・ガッツも単なる二枚目や正義の味方ではなく厚みがある。キリスト教と悪魔崇拝を下敷きにしたと思われる神秘的な設定がおどろおどろしい。気味の悪い描写や絵が多いので注意。
RPGパロディを基礎とした脱力系冒険ユーモアファンタジー。絵柄はかわいいがギャグセンスには毒がある。後半は案外と上質な児童文学にある、成長過程の描写を上手く取り入れている。現在、続編が再開された。
スットン共和国軍・パッパラ隊を舞台にしたスラップスティックコメディ。軍の名前一つとってもシリアス抜きの徹底的なスラップスティックギャグ。海外大国への皮肉も含まれるが、政治的な色彩ではなくあくまで馬鹿話のレベル。作者近影からして、真面目に読んだら罰が当たりそうなほど。
ナチスドイツ下における3人のアドルフを通して、人間と戦争、歴史を描く重厚な手塚治虫晩年の作品。青年漫画でかなり読み応えはある。絵柄がきっちりしているが、本当の歴史ではないので注意。
保険外交員で考古学者の主人公の出会う事件の中の人間模様。リアリズムに近い作品のわりに泥臭くない作風が良い。じっくりと進むので、派手さよりもストーリー性重視の人に合うと思う。
設定はかなり無茶だが、限界の中で描かれる日常の恋愛が明確な輪郭を持った漫画。高橋しん特有の地に足の着いた日常描写が、むしろ起きている状況の異常さを際立たせている。街の風景は現地を知っている私が見てもかなり正確。
1970年代の記憶が亡霊のように世界を襲う。カルトとテロという現代的不安と過ぎ去った高度成長時代を絡ませる手法、そしてそれを大河小説的ではなく、あくまで個人的な視点で描き続ける造りは凄みがある。最終話の締め方はかなり好みが分かれるとは思う。